「なぜ、真田幸村のグラフィックなの?」


 ブランドに興味を持ってくれた人から、よくこう聞かれる。

 真田幸村は、「Yoshikuni」の「侍タイポグラフィ」で第一弾のモチーフだ。

 「真田日本一(ひのもといち)の兵(つわもの)」。こう称えられた彼を、ブランド展開の先鋒とした理由を説明したい。

 一つ目は、デザイナー・井上が、真田幸村の甲冑から感じる燃えるような情熱と美しさを伝えたかったからだ。数ある侍の中でも、彼の甲冑は印象的な造形美をたたえる。真田幸村をよく知らない人にもその造形をスタイリッシュに届けたかった。


 さらにこの不安定な世の中だからこそ、着る人たちを明るい気持ちにできればと考えた。


 どうすれば明るくポップなグラフィックアートに表現できるか。試行錯誤の中で誕生したのが、彼の人生をタイポグラフィック化し、ブルーや虹色の背景を添えたカラフルなアートだった。


 二つ目は、生地の生産地と縁のある侍だったことだ。


 今回のTシャツとスウェットは、和歌山のニット製造工場の高品質な生地を使用している。ブランドの第一弾となるプロダクトを長く着続けてほしいと思い、辿り着いたのが和歌山の生地だった。


 そして、井上が最初のモチーフにしたいと考えていた真田幸村は、壮年期を和歌山の九度山で過ごした。


 偶然の糸がつながり、着心地の良い生地と、渾身のグラフィックを掛け合わせた1着が生まれた。

 

 三つ目は、Tシャツプリント会社が大阪だったことだ。


 侍タイポグラフィは、緻密な文字配置と色の濃淡で立体的な表現をしている。普通のインクジェットプリントだと小さい文字が潰れてしまう上、白い生地にプリントすると色が浅くなり、色の再現性が低くなるという問題があった。


 優秀なプリント技術をもつ会社を探していたところ、大阪のあるプリント会社に巡り会った。同社は国内外のトップブランドの複雑なグラフィックをプリントをしており、特殊プリントを得意とした、いわゆる職人気質な会社だった。


 奇しくも大阪は、真田幸村が大坂の陣で活躍した地だった。

 今回巡り会った会社はいずれも、井上が心を寄せる真田幸村と縁深い地にある。この偶然がきっかけで、井上は「真田幸村を最初のモチーフにする」と決心した。