個展を開いて、初めて見えたこと——成果と課題、その先へ

個展「その決断を問う」を振り返るブログも、今回で第三弾となります。

第一弾では、来場者との出会いや作品解説ツアー、共同制作してくださった方々への感謝について書きました。

第二弾では、なぜ武将の決断を現代の「問い」として表現したのか、その背景にある私自身の決断と失敗についてお話ししました。

最後となる今回は、実際に個展を開催したことで見えてきた成果と課題、そして今後について、率直に振り返りたいと思います。\

一年間かけて考えた世界を、形にできた

今回の個展で最も大きな成果は、自分が表現したかった世界を、一つの空間として形にできたことです。

武将の姿をタイポグラフィで表現するだけでなく、その人物が置かれた状況や決断を、現代を生きる人への「問い」として提示する。

作品、問いのパネル、合戦や勢力ごとの展示構成、作品解説、画集、そして診断コンテンツ「SAMURAI 決断」。

それぞれは別の表現ですが、すべてを「もし自分だったら、何を選ぶか」という一つのテーマにつなげました。

構想から完成まで、思った以上に長い時間がかかりました。制作を進める中で方向性を修正した作品もあり、会期直前まで手を加えた作品もあります。

それでも、頭の中で思い描いていたものを実際の空間として立ち上げ、来場者に体験していただけたことは、大きな自信になりました。\

新しい出会いが、作品の意味を広げてくれた

今回の個展には、以前からYoshikuniを応援してくださっている方だけでなく、SNSを見て初めて足を運んでくださった方や、遠方からお越しいただいた方も多くいらっしゃいました。

作品を前にすると、来場者それぞれが、自分の好きな武将や歴史への考えを話してくれます。

さらに、作品に添えた問いをきっかけに、仕事や人間関係、過去の選択など、ご自身の経験について話してくださる場面もありました。

同じ作品を見ても、受け取るものは一人ひとり異なります。

作者である私が想定していなかった視点を教えてもらうこともあり、対話を重ねるたびに、作品の意味が広がっていくように感じました。

作品を見せることだけでなく、作品を介して人と出会い、言葉を交わすこと。

それも、個展を開催する大きな意味なのだと思います。\

作品が、新しい場所へ旅立った

会期中から会期後にかけて、加藤清正、忍城、豊臣秀長、徳川家康、北条氏邦、石田三成の原画を迎えていただきました。

画集やアートプリントなども、多くの方に手に取っていただきました。

そして、事前に設定していた販売目標も達成することができました。

もちろん、売上だけで個展の成否を判断することはできません。

しかし、作品を「良かった」と感じてもらうことと、実際に対価を支払い、自分のもとへ迎えてもらうことには、大きな違いがあります。

作品を購入するという決断には、その方の価値観や思いが込められています。
その決断をしていただけたことは、制作を続ける者として、何よりありがたいことでした。

特に、熊本地震を受けて制作した加藤清正の作品を迎えていただけたことには、特別な思いがあります。この作品の私の売上分は、熊本への義援金として寄付する予定です。

作品が会場からなくなることには、少し寂しさもあります。

一方で、それぞれの作品が新しい場所で誰かの日常に加わり、問いを投げかけ続けることは、作者として大きな喜びです。\

解説は、作品の「補足」ではなかった

今回、特に手応えを感じたのが作品解説ツアーです。

当初、解説は作品を理解してもらうための補足として考えていました。

しかし実際に行ってみると、解説そのものが展示体験の重要な一部になっていました。

歴史的背景や制作のきっかけを知ることで、作品の見え方が変わる。来場者から質問や感想が返ってくることで、さらに別の話へ広がっていく。

一方向に説明する講義ではなく、作品を中心にした対話が生まれていました。

私はデザイナーなので、最終的には作品そのものに語る力を持たせなければならないと考えています。

それでも、今回のように歴史的背景と現代への問いが重なった作品では、作者の言葉が加わることで、より深く届くものがあると分かりました。

次回も、ただ作品を並べるだけではなく、私自身が言葉で案内する「解説型の個展」を続けたいと考えています。\

体験は、用意するだけでは届かない

一方で、課題もはっきりと見えました。

今回の会場は、1階が作品展示、2階が別展示と物販、体験スペースという構成でした。

しかし2階へは外階段を使う必要があり、その存在に気づかない方もいました。
会場内で案内していたつもりでも、初めて訪れた方にとっては、十分に分かりやすい導線ではなかったと思います。

画集やアートプリントを見る場所が2階にあることも、もっと早い段階で伝える必要がありました。

また、診断コンテンツ「SAMURAI 決断」も用意しましたが、想定していたほど多くの方に体験してもらうことができませんでした。

内容だけをつくり込んでも、その存在や楽しみ方が伝わらなければ、体験にはつながりません。

どこで知ってもらうのか。

どうすれば、やってみたいと思ってもらえるのか。

どのタイミングで案内するのか。

そして、作品鑑賞の流れの中に、どのように組み込むのか。

展示には、作品の質だけでなく、来場者の行動を想像した設計が必要だと痛感しました。

これは失敗というより、実際に開催したからこそ得られた、次へつながる具体的な課題です。\

次は、もっと深く体験できる展示へ

次回も、作者が作品について語り、来場者と対話する形式は続けたいと思っています。

そのうえで、解説を聞く以外にも、来場者が自分から参加できる体験の手段を増やしたいと考えています。

見る。

読む。

聞く。

選ぶ。

問いに答える。

誰かと話す。

一つの展示の中に複数の入口があれば、歴史に詳しい方だけでなく、これまで戦国武将に関心がなかった方にも、作品を自分事として受け取ってもらえる可能性があります。

ただ仕掛けを増やすだけでは、会場が散漫になってしまいます。

今回見えた課題を整理しながら、一つひとつの体験の意味と質をブラッシュアップしていきたいと思います。\

個展が終わっても、問いは続く

今回の個展は、事前に立てた販売目標を達成し、複数の作品を新しい場所へ送り出すことができました。

そして何より、「侍タイポグラフィを通して、人の決断を描く」というYoshikuniの方向性を、実際の展示として示すことができました。

一方で、会場導線や体験コンテンツの伝え方など、改善すべき点も残りました。

成果だけでも、反省だけでもなく、その両方があったからこそ、次に何を磨くべきかが見えてきました。

個展「その決断を問う」は終了しました。

しかし、今回生まれた作品や問い、出会い、そして新しく見つかった課題は、これからのYoshikuniへ続いていきます。

会場にお越しいただいた皆さま、作品や画集を迎えてくださった皆さま、遠方から応援してくださった皆さま。

改めまして、本当にありがとうございました。

今回展示した26人の武将と、それぞれに込めた問いは、一冊の画集に収録しています。

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