東洲斎写楽の「三代目大谷鬼次の奴江戸兵衛」は、江戸の役者絵の中でもひときわ異彩を放つ作品です。
写楽が描いたのは役者の顔ではなく、感情が渦巻く瞬間そのもの。
怒りと緊張が交錯する表情は、まるで舞台の空気まで封じ込めたような迫力を持っています。
今回、私はその一瞬の力を、タイポグラフィという現代の筆で再構築しました。
顔全体は、東洲斎写楽について書かれた文字によって構成されています。
情報を伝えるための文字が、造形そのものとして機能することで、描くのではなく組むという新しい肖像表現が生まれました。
さらに、目・鼻・口といった顔の中心部には、日本人なら誰もが知る「へのへのもへじ」の文字要素をさりげなく用いています。
シリアスな造形の中に潜むユーモアと遊び心。
それは、写楽の時代にも通じる風刺と洒脱の精神へのオマージュでもあります。
写楽は生前こそ理解されませんでしたが、後にドイツの美術史家ユリウス・クルトによって再評価され、「東洋のレンブラント」と称されました。
異端として生きたその革新性に、私は深く共感しています。
この作品を通して、写楽という名を現代に再び呼び戻したいと思います。
それは模倣ではなく、時代を越えた対話です。
文字が形となり、形が記憶へと変わる。
Sharaku Typographyは、そんな時間と感情の交差点に立つ表現です。
【展示・販売情報】
この作品をモチーフにしたTシャツを、Tokyo 江戸ウィーク 2025(上野恩賜公園)で発表します。
会期は 2025年10月10日(金)から13日(月・祝)までの4日間。
白と黒の2色展開で、限定販売。
戦国魂ブース内「Yoshikuni」にてご覧いただけます。
写楽の描いた一瞬の熱を、現代のタイポグラフィで纏う特別な一枚です。